[1988年文献] 脳アミロイド・アンギオパチーの発症率は年齢と相関するが,血圧やアテローム性脳動脈硬化の進展度とは相関せず
日本人一般住民を対象としたコホート研究において,1971~1983年に死亡した剖検例のうち,脳アミロイド・アンギオパチー(CAA)の発症ならびに特徴について検討を行った。その結果,CAAの発症率は年齢とともに増加したが,アテローム性脳動脈硬化および血圧との関連は認められなかった。
Masuda J, et al: Autopsy study of incidence and distribution of cerebral amyloid angiopathy in Hisayama, Japan.Stroke 1988; 19: 205-10.
- コホート
- 1971年から1983年の間に死亡し,剖検を受けた40歳以上の400例。
剖検率は80%。 - 結 果
- 脳アミロイド・アンギオパチー(CAA)の発症は,91例(22.8%)で見られた。うち男性は40例(18.3%),女性は51例(28.0%)。
CAAの発症率は,年齢と共に増加。
最もCAAの頻度が高かったのは前頭葉(66例)で,以下,頭頂葉,後頭葉,側頭葉,海馬の順に高かったが,これらの差は有意ではなかった。被殻ではCAAの発症なし。
アミロイドの蓄積の多くは軟髄膜と大脳皮質血管で起こっており,大脳皮質組織の毛細血管での蓄積は少なかった。皮質下白質での蓄積は全くなし。
大脳の主要な動脈での動脈硬化の進展度は,CAAの発症と相関なし。
CAAの発症と血圧,およびCAAの発症と剖検時の心臓重量には有意な相関なし。
脳出血は男性19例,女性7例で発症。出血部位の内訳は,大脳基底核および視床が23例,前頭-頭頂葉が1例,前頭-頭頂-後頭葉が1例,小脳が1例。
このうちCAAが顕著だったのは,82歳,84歳,85歳の男性。小脳出血の1例(85歳男性)は,CAA血管の破裂が原因と考えられる。この例では,広範囲の大脳血管でアミロイドの蓄積が見られた(前頭葉2+,側頭葉2+,頭頂葉2+,後頭葉2+)。小脳でも,動脈瘤があり壊死している血管が4本見られた(小脳皮質血管4+)。これらの損傷は,CAAにより二次的に起きたものと思われる。生前の血圧は正常範囲だった。残り2例では脳出血があり,大脳皮質血管でコンゴ赤染色陽性が出たが,この脳出血がCAAに関連するものであるかは不明。出血部位周辺でのCAA蓄積はなかった。
脳出血を発症していない8例のCAA血管のうち,30本が壊死していた。この8例のうち4例は高血圧既往なし。
全身性アミロイドーシスは5例あったが,大脳血管におけるアミロイドの蓄積が見られたのは1例のみ(93歳女性,前頭葉2+,頭頂葉1+)で,残り4例では脳のアミロイド蓄積は全くなし。