[2007年文献] メタボリックシンドロームの女性では,歯周病のリスクが有意に高くなる
日本人一般住民を対象としたコホート研究において,中高年女性を対象とした断面解析により,メタボリックシンドロームの構成要素と歯周病の関連を検討した。その結果,メタボリックシンドロームの要素を複数あわせ持つ例では歯周病のリスクも高くなるため,通常の健診に加え,歯科検診の受診を積極的に検討すべきであることが示唆された。
Shimazaki Y, et al. Relationship of metabolic syndrome to periodontal disease in Japanese women: the Hisayama Study. J Dent Res. 2007; 86: 271-5.
- コホート
- 歯が10本以上ある40~79歳の女性584例(1998年)。
- 結 果
- 歯周ポケット(Pocket Depth,PD)の深さの平均は1.5mm,アタッチメントロス(Clinical Attachment Loss,CAL)の平均は1.9mm。
PD 2mm以上の例では,2mm未満の例よりも腹囲,空腹時血糖値,高血圧既往率,降圧薬服用率が高く,HDL-Cが低かった。
CAL 3mm以上の例では,3mm未満の例よりも年齢および糖尿病既往率が高かった。
注) 歯周ポケットの深さとは,歯肉辺縁からポケット底(接合上皮で,もっとも歯の根に近い端)までの距離。アタッチメントレベルとはエナメル質とセメント質の境界からポケット底までの距離で,アタッチメントロスというのはこの距離が深くなっている場合をさす。
メタボリックシンドロームの5要素それぞれを持つ例におけるPD 2mm以上,およびCAL 3mm以上のオッズ比は以下のようになった(vs. 要素がない場合,**P<0.01,*P<0.05)。
PDと有意に関連していたのは腹囲,HDL-C低値,空腹時血糖。
CALと有意に関連していたのはHDL-C低値。
腹囲: PD 1.8**,CAL 0.9,高血圧: PD 1.5,CAL 1.3,HDL-C低値: PD 2.2*,CAL 2.8*,トリグリセリド高値: PD 1.5,CAL 2.0,空腹時高血糖: PD 2.2 *,CAL 1.7。(腹囲: 88cm以上,高血圧: 収縮期血圧135mmHg以上,HDL-C: 50mg/dL未満,トリグリセリド: 150mmhg以上,空腹時高血糖: 110mg/dL以上)
メタボリックシンドロームの要素を複数あわせ持つ場合,要素の数によるPD 2mm以上,およびCAL 3mm以上のオッズ比は以下のようになった(vs. 要素が0の人,**P<0.01,*P<0.05)。
1つ: PD 2.0*,CAL 1.0,2つ: PD 2.3*,CAL 1.2,3つ: PD 4.1**,CAL 2.9,4つ/5つ: PD 6.6**,CAL 4.2*。
◇ 結論
日本人一般住民を対象としたコホート研究において,中高年女性を対象とした断面解析により,メタボリックシンドロームの構成要素と歯周病の関連を検討した。その結果,メタボリックシンドロームの要素を複数あわせ持つ例では歯周病のリスクも高くなるため,通常の健診に加え,歯科検診の受診を積極的に検討すべきであることが示唆された。