[2014年文献] 足関節上腕血圧比(ABI)≦0.9は,心血管疾患および冠動脈疾患発症リスクと関連
アジア人の一般住民を対象として,末梢動脈疾患(PAD)の指標としての足関節上腕血圧比(ABI)と心血管疾患発症リスクとの関連についてはじめて検討した研究。平均7.1年間の追跡の結果,ABI低値(0.9以下)は,他の心血管危険因子とは独立に,心血管疾患および冠動脈疾患の発症リスクと有意に関連することが示された。ABIは簡便かつ非侵襲的に測定できるため,今後,心血管疾患の高リスク者スクリーニングのための活用が期待される。
Kojima I, et al. A Low Ankle Brachial Index is Associated with an Increased Risk of Cardiovascular Disease: The Hisayama Study. J Atheroscler Thromb. 2014; 21: 966-73.
- コホート
- 2002~2003年に健診を受診した40歳以上の3328人のうち,研究への同意が得られなかった30人,心血管疾患既往のある190人,足関節上腕血圧比(ankle brachial index: ABI)のデータのない152人,ABIが1.40超の2人を除外した2954人(男性1262人,女性1692人)を2009年11月まで平均7.1年間追跡。
対象者を,ABIによる以下の3つのカテゴリーに分類した。
低値(0.90以下): 40人(1.4%)
境界域(0.91~0.99): 216人(7.3%)
正常(1.00~1.40): 2698人(91.3%) - 結 果
- ◇ 対象背景
ABIが低いカテゴリーほど,年齢,収縮期血圧,糖尿病の割合が有意に高くなっていた(いずれもP for trend<0.001)。高血圧の割合や拡張期血圧,BMI,喫煙率などに有意な差はみられなかった。
追跡期間中に,134人が心血管疾患を発症(うち冠動脈疾患54人,脳卒中85人)。
◇ ABIと心血管疾患リスク
ABIのカテゴリー間でKaplan-Meier曲線を比較すると,正常と境界域とではほとんど差がなかったが,低値では心血管疾患非発症生存率が低くなっていた(P<0.001)。冠動脈疾患についても同様の結果であったが(P<0.001),脳卒中については有意な差はみられなかった(P=0.15)。
ABIのカテゴリーごとの心血管疾患発症,ならびにその内訳の多変量調整ハザード比†(95%信頼区間)は以下のとおりで(それぞれ正常[対照],境界域,低値),心血管疾患および冠動脈疾患について,ABI低値における有意なリスク増加がみとめられた。脳卒中および虚血性脳卒中については有意な関連はみられず,出血性脳卒中については症例数が少なく解析できなかった。
(†年齢,性,収縮期血圧,降圧薬服用,糖尿病,総コレステロール,HDL-C,肥満,喫煙,アルコール摂取および定期的な運動で調整)
心血管疾患: 1.00,1.09(0.58-2.05),2.40(1.14-5.06)[P for trend=0.054]
冠動脈疾患: 1.00,0.95(0.34-2.70),4.13(1.62-10.55)[P for trend=0.018]
脳卒中: 1.00,1.11(0.50-2.42),1.23(0.38-4.02)[P for trend=0.68]
虚血性脳卒中: 1.00,1.48(0.62-3.51),2.07(0.62-6.93)[P for trend=0.16]
◇ 結論
アジア人の一般住民を対象として,末梢動脈疾患(PAD)の指標としての足関節上腕血圧比(ABI)と心血管疾患発症リスクとの関連についてはじめて検討した研究。平均7.1年間の追跡の結果,ABI低値(0.9以下)は,他の心血管危険因子とは独立に,心血管疾患および冠動脈疾患の発症リスクと有意に関連することが示された。ABIは簡便かつ非侵襲的に測定できるため,今後,心血管疾患の高リスク者スクリーニングのための活用が期待される。