[2016年文献] 血清尿酸値が高い人では慢性腎臓病発症リスクが高い
血清尿酸値高値の人は,慢性腎臓病(CKD)発症リスクが高くなることがさまざまな研究から報告されている。しかし,一般住民において,血清尿酸値と腎臓病の診断基準となる腎機能障害ならびにアルブミン尿との関連を個別に検討した研究は少ない。そこで,日本人一般住民を対象とした前向きコホート研究において,血清尿酸値高値が腎機能障害とアルブミン尿に与える影響,ならびに推定糸球体濾過量(eGFR)変化との関連についての検討を行った。その結果,血清尿酸値高値は腎機能障害およびアルブミン尿の有意な危険因子であることが示された。また,血清尿酸値が高いほど,eGFRの年間低下率が大きかった。
Takae K, et al. Serum Uric Acid as a Risk Factor for Chronic Kidney Disease in a Japanese Community- The Hisayama Study. Circ J. 2016; 80: 1857-62.
- コホート
- 2002~2003年に健診を受診した40歳以上の3328人のうち,研究参加の同意が得られなかった30人,尿または血液検体が得られなかった86人,推定糸球体濾過量(eGFR)が60 mL/分/1.73m2未満の250人,尿中アルブミン・クレアチニン比(U-ACR)が30 mg/g以上の538人を除いた2424人をベースライン調査の対象とした。2007年時点でeGFRとU-ACRのデータが得られていたた2059人(男性851人,女性1208人)を解析した(追跡期間: 5年)。
KDIGO(Kidney Disease Improving Global Outcomes)2012診療ガイドラインに従い,腎機能障害はeGFR<60 mL/分/1.73m2,アルブミン尿はU-ACR≧30 mg/gと定義し,慢性腎臓病(CKD)の定義は,腎機能障害またはアルブミン尿のいずれかをもつ場合とした。
ベースライン時の血清尿酸値の四分位値により,対象者を以下の4つのカテゴリーに分類した。
[Q1]≦4.0 mg/dL(554人),[Q2]4.1~4.9 mg/dL(515人),[Q3]5.0~5.8 mg/dL(483人),[Q4]≧5.9 mg/dL(507人) - 結 果
- 5年間の追跡期間中にCKDを発症した人は396人。そのうち腎機能障害は125人,アルブミン尿は312人であった。
◇ 対象背景
血清尿酸値のカテゴリーごとの対象背景は以下のとおり。
年齢(歳): [G1]58,[G2]60,[G3]60,[G4]58(P for trend=0.89)
男性(%): 13.7%,26.5%,44.0%,83.9%(P for trend<0.001)
収縮期血圧(mmHg): 124,127,130,132(P for trend<0.001)
拡張期血圧(mmHg): 74,77,78,80(P for trend<0.001)
総コレステロール値(mg/dL): 198,207,205,209(P for trend<0.001)
BMI(kg/m2): 21.9,22.8,23.7,24.2(P for trend<0.001)
ヘモグロビン(g/dL): 13.3,13.6,13.8,14.0(P for trend<0.001)
高感度CRP(mg/L): 0.35,0.44,0.48,0.58(P for trend<0.001)
eGFR(mL/分/1.73m2): 83,82,80,79(P for trend<0.001)
U-ACR(mg/g): 7.8,7.1,7.3,7.0(P for trend=0.10)
飲酒: 32.8%,45.1%,51.3%,53.0%(P for trend=0.10)
◇ 尿酸値とCKD発症リスク
尿酸値のカテゴリーごとのCKD発症の多変量調整†オッズ比(95%信頼区間)は以下のとおり。尿酸値が高いほど,CKD発症ならびに腎機能障害,アルブミン尿のリスクが有意に増加した(†年齢,性別,収縮期血圧,降圧薬の使用,糖尿病,総コレステロール,HDL-C,BMI,ヘモグロビン,尿酸降下薬の使用,log hs-CRP,ベースライン時のeGFR,log U-ACR,喫煙,飲酒,定期的な運動により調整)。
・CKD
[G1]1.00,[G2]1.21(0.84-1.74),[G3]1.47(1.01-2.17),[G4]2.10(1.37-3.23),P for trend<0.001
・腎機能障害
[G1]1.00,[G2]2.30(1.10-4.82),[G3]2.81(1.34-5.88),[G4]3.73(1.65-8.44),P for trend=0.002
・アルブミン尿
[G1]1.00,[G2]1.12(0.76-1.65),[G3]1.35(0.90-2.03),[G4]1.81(1.14-2.87),P for trend=0.01
◇ 尿酸値とeGFRとの関連
尿酸値のカテゴリーごとのeGFR(mL/分/1.73m2)の多変量調整†後の年間変化率(95%信頼区間)は以下のとおり。尿酸値が高いほど,eGFRの低下率が有意に大きかった。
[G1]-1.05(-1.15~-0.94),[G2]: -1.21(-1.31~-1.12),[G3]: -1.21(-1.31~-1.11),[G4]: -1.33(-1.44~-1.22),P for trend=0.02
◇結論
血清尿酸値高値の人は,慢性腎臓病(CKD)発症リスクが高くなることがさまざまな研究から報告されている。しかし,一般住民において,血清尿酸値と腎臓病の診断基準となる腎機能障害ならびにアルブミン尿との関連を個別に検討した研究は少ない。そこで,日本人一般住民を対象とした前向きコホート研究において,血清尿酸値高値が腎機能障害とアルブミン尿に与える影響,ならびに推定糸球体濾過量(eGFR)変化との関連についての検討を行った。その結果,血清尿酸値高値は腎機能障害およびアルブミン尿の有意な危険因子であることが示された。また,血清尿酸値が高いほど,eGFRの年間低下率が大きかった。