[学会報告・日本高血圧学会2011] 久山町研究,JALS,大迫研究,壮瞥町血圧在宅管理プロジェクト,吹田研究,端野・壮瞥町研究,亘理町研究
第34回日本高血圧学会総会は, 2011年10月20日(木)〜22日(土)の3日間にわたって,宇都宮にて開催された。
学会のランチョンセミナーでは最近恒例となっている減塩弁当が提供され,会場ではナチュラルローソンで実際に販売されている減塩おにぎり(塩分量が通常の30~70%)も配布された(写真)。
ここでは,学会で発表された疫学研究の一部を紹介する。
久山町研究 | — | アルブミン尿を有する人では末梢動脈疾患の有病率が高い |
JALS | — | 2000年以降の日本人のリスク予測では,血圧値だけでなく降圧薬の服薬状況を考慮する必要がある |
JALS | — | 高血圧,2型糖尿病,慢性腎臓病の合併が進むほど,総死亡および心血管疾患死亡リスクが増加 |
大迫研究 | — | 家庭血圧による血圧日間変動幅は認知機能低下のリスク |
大迫研究 | — | アルドステロン/レニン比高値はCKD発症リスクと関連 |
大迫研究 | — | アルドステロン/レニン比高値は夜間降圧度の減少と関連 |
壮瞥町血圧在宅管理 プロジェクト |
— | 家庭血圧データをワイヤレスで送信するシステムにより, きめ細かい血圧管理支援が可能に |
吹田研究 | — | 血清シスタチンC値が高いほど,高血圧有病率が高い |
端野・壮瞥町研究 | — | 塩分と高血圧との関連に,酸化ストレスが関与している可能性 |
亘理町研究 | — | 正常高値血圧は微量アルブミン尿の発症リスク |
[久山町研究] アルブミン尿を有する人では末梢動脈疾患の有病率が高い
発表者: 九州大学・碓井 知子 氏 (10月20日(木),一般口演)目的: | アルブミン尿と末梢動脈疾患(PAD)との関連を検討。 | |
コホート・手法: | 久山町研究の2002年の健診を受診した40歳以上の3061人(断面解析)。PADは足関節上腕血圧比(ABI)<0.9とした。アルブミン尿については尿中アルブミン/クレアチニン比(ACR)により正常アルブミン尿(ACR<30.0 mg/g),微量アルブミン尿(30.0 mg/g≦ACR≦300.0 mg/g),顕性アルブミン尿(ACR>300.0 mg/g)に分類し,正常アルブミン尿についてはさらに三分位に分類して検討した。(久山町研究へ) | |
結果: | 尿中ACRの値が高いほどPADの有病率は有意に増加しており,正常アルブミン尿高値レベル(10.9~29.9 mg/g)から有意なリスクの上昇がみとめられた。PADを有するオッズ比(多変量調整後)についても結果は同様であった。尿中ACRによりPADの判別能が改善するかどうかを検討した結果,既知の心血管疾患危険因子のみを変数として用いたモデルにくらべ,尿中ACRを組み入れたモデルではPADの判別能が有意に上昇した。微量アルブミン尿または顕性アルブミン尿の人が高血圧をあわせもつ場合,正常アルブミン尿かつ非高血圧の人にくらべ,PADを有するオッズ比は相乗的に高くなった。この結果は,糖尿病および喫煙に関しても同様であった。 |
碓井知子氏のコメント 今回のわれわれの検討では,正常アルブミン尿高値のレベルから有意にPADの有病率が高くなり,さらに高血圧,糖尿病,喫煙などの危険因子を有する人ではPADを有するオッズ比が相乗的に増大しました。アルブミン尿を有する人では,早期のPADの診断や,PADを予防するために,高血圧,糖尿病,喫煙などの心血管病危険因子について厳格な管理が重要と考えられます。 |
[JALS] 2000年以降の日本人のリスク予測では,血圧値だけでなく降圧薬の服薬状況を考慮する必要がある
発表者: 滋賀医科大学・三浦 克之 氏 (10月20日(木),一般口演)目的: | 降圧薬服薬率が増加した2000年代の,日本人における血圧値と心血管疾患(CVD)死亡リスクとの関連について,日本の疫学コホート研究データを前向きに統合したJALS統合研究により検討。 | |
コホート・手法: | JALS統合研究に参加した34コホートのうち,追跡データに不備のない22コホートの72366人のCVD死亡について,2002年から2008年12月31日まで5.6年間(中央値)追跡。JNC7の血圧カテゴリー(正常血圧/前高血圧/ステージ1高血圧/ステージ2高血圧),ならびにベースライン時の降圧薬服薬の有無により全体を8つのグループに分けて解析を行った。(JALSへ) | |
結果: | CVD死亡率比(多変量調整)について「服薬なし+正常血圧」の人を対照として比較したところ,「服薬なし+ステージ2高血圧」(CVD死亡率比2.30),「服薬あり+正常血圧」(2.01),「服薬あり+ステージ1高血圧」(1.93),「服薬あり+ステージ2高血圧」(2.06)で有意なCVD死亡率比の増加がみとめられた。「服薬あり+前高血圧」では有意なリスク上昇はなかった。また,血圧値を連続変数として用いたモデルにより検討した結果,血圧値とCVD死亡率比との関連は,収縮期血圧,拡張期血圧とも,服薬なし群のほうが服薬あり群にくらべて強かった。以上の結果より,2000年以降の日本人においてCVD死亡リスクを予測するためには,血圧値だけでなく,降圧薬の服薬状況を考慮する必要があると考えられた。 |
三浦克之氏のコメント 今回の結果のなかで,服薬により前高血圧にコントロールされている群のCVD死亡リスクが,正常血圧者と差がなかったという点は重要だと思います。早期からの降圧治療の効果が,観察研究でも確認できるようになってきたといえます。服薬中の正常血圧者(血圧120/80 mmHg未満)ではCVD死亡リスクの増加がみとめられましたが,これは,心不全患者などの特殊な集団が含まれるためである可能性があります。 |
[JALS] 高血圧,2型糖尿病,慢性腎臓病の合併が進むほど,総死亡および心血管疾患死亡リスクが増加
発表者: 愛媛大学・田原 康玄 氏 (10月22日(土),一般口演)目的: | 高血圧,2型糖尿病,慢性腎臓病(CKD)およびこれらの合併と,総死亡および心血管疾患(CVD)死亡リスクとの関連について,日本の疫学コホート研究データを前向きに統合したJALS統合研究により検討。 | |
コホート・手法: | JALS統合研究の75962人を,2002年から2008年12月31日まで5.58年間(中央値)追跡。(JALSへ) | |
結果: | 未治療および治療下高血圧,2型糖尿病,高度の腎機能低下(推算糸球体濾過量[eGFR]<30 mL/分/1.73m2)は,いずれも総死亡およびCVD死亡リスクの有意な危険因子であった。高血圧,2型糖尿病,CKD(eGFR<60 mL/分/1.73m2)の合併と総死亡リスクとの関連を検討すると,これらの合併が進むほど総死亡のハザード比が相加的に増加していた。CVD死亡リスクについてもほぼ同様の結果がみとめられたが,2型糖尿病を単独で有する人(非高血圧+非CKD+2型糖尿病)については,いずれももたない人にくらべ,CVD死亡のハザード比の増加はみとめられなかった。 |
田原康玄氏のコメント JALS統合研究は,統一した測定基準により実施されている12万人規模の疫学研究で,これまで症例数不足などにより不可能であったサブ集団での解析も,高い信頼性のもとに可能となっています。今回は,高血圧,糖尿病,CKDと総死亡,循環器死亡との関連を報告しました。各疾患の集積は死亡リスクを相加的に押し上げましたが,糖尿病単独では循環器死亡のリスクとはなりませんでした。これまでにも,糖尿病単独では循環器死亡のリスクにならない可能性が示唆されてきましたが,厳密に層別化したうえで行われた検討はありません。大規模研究であるJALSだからこそ初めて明示できた成果といえます。 |
[大迫研究] 家庭血圧による血圧日間変動幅は認知機能低下のリスク
発表者: 東北大学・松本 章裕 氏 (10月22日(土),JSH TOP10セッション)目的: | 家庭血圧により,血圧および血圧日間変動と認知機能との関連を検討。 | |
コホート・手法: | 大迫研究の55歳以上の450人を平均7.2年間追跡。家庭血圧測定を4週間行い,血圧値の個人内標準偏差を血圧日間変動とした。認知機能の評価にはMMSE(mini-mental state examination)を用い,24点未満を認知機能低下とした。(大迫研究へ) | |
結果: | 家庭収縮期血圧値,および随時収縮期血圧値と認知機能低下との有意な関連はみられなかったが,家庭収縮期血圧の日間変動幅が大きくなるほど,認知機能低下のオッズ比が有意に増加した。血圧値を連続変数として用いたモデルでも,収縮期血圧の日間変動幅の1 SD増加と認知機能低下が有意に関連することが示され,拡張期血圧の日間変動幅についても同様の傾向がみとめられた。以上の結果から,家庭血圧測定により血圧日間変動をとらえることで認知機能低下を予測できる可能性が示された。 |
松本章裕氏のコメント わが国では,高齢化の進行にともなって,認知症患者が増加の一途をたどっています。患者の増加を抑制するためには,認知機能の低下を早期にとらえることが必要です。これまでに,随時血圧と認知機能低下や認知症の関連が報告されていますが,家庭血圧およびその日間変動幅を用いた検討はありませんでした。今回の結果より,将来の認知機能障害を予測するうえで,家庭血圧測定が有用である可能性が示されました。今後も対象者を増やし,危険因子による層別化解析などを進めたいと思います。 |
[大迫研究] アルドステロン/レニン比高値はCKD発症リスクと関連
発表者: 東北大学・寺田 志保 氏 (10月21日(金),一般口演)目的: | 血漿アルドステロン濃度/血漿レニン活性比(ARR)と慢性腎臓病(CKD)発症リスクとの関連を検討。 | |
コホート・手法: | 大迫研究の35歳以上の非CKDかつ降圧薬非服用者689人を9.7年間(中央値)追跡。推算糸球体濾過量(eGFR)が60 mL/分/1.73m2未満または蛋白尿陽性の場合にCKDとした。(大迫研究へ) | |
結果: | 血漿レニン活性値はCKD発症の多変量調整ハザード比と有意な負の相関,ARRは有意な正の相関を示していた。また,CKD発症者のベースライン時の血漿レニン活性値,血漿アルドステロン濃度,ARRを非発症者と比較すると,発症者の血漿レニン活性値は有意に低く,ARRは有意に高かった。以上の結果から,食塩摂取量が多い日本人一般住民において,血漿レニン活性値低値,およびARR高値が,血圧とは独立にCKD発症の新たな危険因子となる可能性が示唆された。 |
寺田志保氏のコメント 今回われわれは血漿レニン活性低値,およびARR高値がCKD発症の予測因子であることをはじめて報告しました。これらの結果は,食塩感受性の一形態である比較的アルドステロン高値が将来の腎障害と関連することを示唆していると考えられます。今後は,異なる食習慣の集団においても検討を行うなど,レニン‐アンジオテンシン‐アルドステロン系がCKD発症経路におよぼす影響をさらに明らかにしていく必要があると考えられます。 |
[大迫研究] アルドステロン/レニン比高値は夜間降圧度の減少と関連
発表者: 東北大学・佐藤 倫広 氏 (10月21日(金),一般口演)目的: | 血漿アルドステロン濃度/血漿レニン活性比(ARR)と夜間降圧度の減少(non-dipping)との関連を,推定尿中ナトリウム排泄量ごとに検討。 | |
コホート・手法: | 大迫研究で24時間自由行動下血圧測定を行った55歳以上の184人(断面解析)。夜間降圧度<10%の場合にnon-dippingとした。また,スポット尿を用いて推定24時間ナトリウム排泄量を算出した。(大迫研究へ) | |
結果: | ARR高値は,non-dippingのオッズ比との有意な関連を示した。尿中ナトリウム排泄量の三分位ごとにみると,ナトリウム排泄量がもっとも高いグループでのみ,ARR高値とnon-dippingのオッズ比との有意な関連がみとめられた。以上の結果から,塩分摂取量の多い日本人一般住民において,ARR高値による食塩感受性の増大がnon-dippingの一因となっている可能性が示唆された。 |
佐藤倫広氏のコメント 大迫研究より,比較的アルドステロン高値が高ナトリウム摂取群でのみ家庭高血圧と関連する可能性を報告しています。これらの結果の重要な点は,減塩によって比較的アルドステロン高値の健康障害を抑制できる可能性を示していることです。本邦における食塩摂取量はいまだに過剰であり,今後のさらなる減塩運動が必要であるといえます。 |
[壮瞥町在宅血圧管理プロジェクト] 家庭血圧データをワイヤレスで送信するシステムにより,きめ細かい血圧管理支援が可能に
発表者: 札幌医科大学・大西 浩文 氏(10月20日(木),一般口演)目的: | 家庭血圧測定を実施しているが通院していない人,医療機関から離れたところに住んでいる人などに対して適切なアドバイスを行うことのできるシステムの確立を目指し,端野・壮瞥町研究の参加者の一部を対象に,遠隔在宅血圧管理プロジェクトを実施した。 | |
コホート・手法: | 北海道有珠郡壮瞥町の2010年7月の健診を受診した,または壮瞥町の広報などによる募集に応じた119人。自動血圧計と通信機器を参加者に無料で貸し出し,家庭血圧測定を実施した。測定した血圧データは,血圧計に接続された通信機器から携帯電話通信網を介してケルコム社(データ管理を行う)のサーバにワイヤレスで送信される。医療スタッフ(札幌医科大学の医師や壮瞥町保健センターの保健師)はインターネットを介してケルコム社のサーバにアクセスし,参加者の血圧データを取得したうえで,受診勧奨や服薬指導,生活習慣アドバイスなどの血圧管理支援を行った。 | |
結果: | 家庭血圧の平均測定回数は1年あたり498回。健診受診者では健診時の血圧値とあわせた評価により,仮面高血圧や白衣高血圧といった個人の状況に応じた対策を行うことが可能になった。また,個人内の血圧日間変動幅(標準偏差)を求めた結果,高齢者および降圧薬服用者で変動幅が大きいことが示された。参加者へのアンケート調査では,プロジェクト参加後に治療を開始した人や,支援をうけて治療内容を変更した人がいたことがわかり,データの蓄積がきめ細かい治療に結びつくことが期待された。今後の課題として,健康意識が低い人でも継続しやすいようなインセンティブや,高齢者でも利用しやすいユーザーインターフェイスの開発,通信費用の問題を含めたサポート体制の整備などが必要と考えられた。 |
大西浩文氏のコメント 今回のプロジェクトは,地域一般住民の血圧管理サポートサービスの一つのモデルになる取り組みと考えています。健診で毎年血圧高値を指摘される方で,このプロジェクトに参加していただいたことで白衣高血圧と判定された方や,治療中でありながら家庭血圧が高めであることがわかった方など,今後の治療方針を決めるうえでこのシステムが役立ったケースが複数みとめられました。ただ,今回はこれまで端野・壮瞥町研究でのつながりのある住民の方々をおもな対象としており,そのことが,プロジェクトが成功した大きな理由の一つであったと考えられます。こうしたサービスが広く一般的に普及するには,まだまだ課題も多いと思います。 |
[吹田研究] 血清シスタチンC値が高いほど,高血圧有病率が高い
発表者: 国立循環器病センター・中村 敏子 氏 (10月21日(金),一般口演)目的: | 血清クレアチニン値に代わる腎機能指標として注目されている血清シスタチンC(Cys-C)を用いて,都市部一般住民における軽度腎機能障害と高血圧有病率との関連を検討。 | |
コホート・手法: | 吹田研究の3,240人(断面解析)。慢性腎臓病(CKD)は,推算糸球体濾過量(eGFR)<60 mL/分/1.73m2または蛋白尿陽性とした。(吹田研究へ) | |
結果: | Cyc-C値が高いほど,高血圧有病率は有意に高くなっていた。CKDの有無ごとにみると,非CKDの人では同様の傾向がみられたが,CKDの人ではCyc-C値がもっとも高い五分位でのみ高血圧有病率が有意に高くなっていた。男女別にみると,Cyc-C値と高血圧有病率との関連は,女性のほうが男性よりも顕著であった。 |
中村敏子氏のコメント 今回の結果から,非CKDの人におけるシスタチンCと高血圧罹患との関係性が示唆されました。今後さらに,シスタチンCが腎障害だけでなく,高血圧を含む循環器疾患と関連することが明らかになると考えられます。測定法の標準化が確立され,シスタチンCが臨床の現場でも活用されることを期待しています。 |
[端野・壮瞥町研究] 塩分と高血圧との関連に,酸化ストレスが関与している可能性
発表者: 札幌医科大学・赤坂 憲 氏 (10月22日(土),JSH TOP10セッション)目的: | 酸化ストレスマーカー,推定塩分摂取量と血圧との関連を検討。 | |
コホート・手法: | 端野・壮瞥町研究の638人(断面解析)。酸化ストレスマーカーとして早朝スポット尿中の8-ヒドロキシ-2’-デオキシグアノシン(8-OHdG)*を測定した。また,早朝スポット尿中のクレアチニン値およびナトリウム値から推算した24時間ナトリウム排泄量を用い,1日の推定塩分摂取量を算出した。(端野・壮瞥町研究へ) | |
結果: | 推定塩分摂取量は,収縮期血圧のみならず,尿中8-OHdG値とも有意な正の相関を示していた。重回帰分析により収縮期血圧に関連する因子を検討した結果,年齢,BMI,推定塩分摂取量が独立した因子として見出され,尿中8-OHdGは有意な因子とはならなかった。推定塩分摂取量と尿中8-OHdGについて,それぞれの中央値により高値群と低値群を設定して血圧との関連を検討した結果,推定塩分摂取量と尿中8-OHdGは相加的に収縮期血圧と関連していた。以上の結果より,塩分摂取が血圧上昇をきたす機序に酸化ストレスが関与している可能性が示された。 |
赤坂憲氏のコメント 以前から,塩分の摂取が血圧を上昇させるメカニズムの一つとして,酸化ストレスが関与している可能性が指摘されていました。動物実験からは,「塩分が酸化ストレスを増やす」 → 「酸化ストレスにより血圧が上がる」という経路があることを示すデータも報告されています。そこで今回,ヒトにおける検証を行ったところ,同様の結果が得られました。基礎実験からの仮説を,ヒトの集団,しかも数百人の一般住民コホートを対象とした疫学的な検討によって裏付けることができたと考えています。健診の現場では,引き続き減塩指導を行っていく必要があります。今後,塩分摂取量が極端に多い方に対しては,具体的な摂取量をお知らせし,減塩につなげる指導も行う予定です。 |
[亘理町研究] 正常高値血圧は微量アルブミン尿の発症リスク
発表者: 東北労災病院・金野 敏 氏(10月21日(金),一般口演)目的: | 血圧と微量アルブミン尿(MA)新規発症リスクとの関連を検討。 | |
コホート・手法: | 亘理町研究の2032人を1年間追跡。MAの定義は尿中アルブミン/クレアチニン比30~299 mg/gCrとし,血圧については『高血圧治療ガイドライン2009』の分類を用いた。 | |
結果: | 収縮期血圧,拡張期血圧を問わず,血圧が高いカテゴリーほど1年後のMA発症率が高くなっていた。血圧のカテゴリーごとにMA発症の多変量調整オッズ比を比較すると,収縮期血圧についてはII度高血圧以上,拡張期血圧については正常高値血圧およびI度高血圧において,至適血圧にくらべて有意なリスク増加がみとめられた。MA発症に関連する独立した因子は,性別,収縮期血圧,トリグリセリド値,空腹時血糖値であった。
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金野敏氏のコメント 一般住民において血圧がMAの新規発症に与える影響をみた研究は少なく,とくに日本人に関してはほとんど報告がありません。今回の研究では,ベースラインの血圧をカテゴリー別に検討すると,とくに正常高値血圧およびI度拡張期高血圧がMA発症に関連していることが明らかとなり,MA発症予測における拡張期血圧の重要性が認識される結果となりました。今後もデータ収集を継続することで,MAの新規発症に関連するリスクの同定がさらに進むことが期待されます。 |