岩手県北部~北部沿岸地域の3つの保健医療圏 宮古保健医療圏: 宮古市,山田町,岩泉町,田野畑村,川井村 久慈保健医療圏: 久慈市,普代村,野田村,洋野町 二戸保健医療圏: 二戸市,軽米町,九戸村,一戸町 |
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18歳以上の住民 (市町村の実施する基本健康診査の受診者) |
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2万6469人 (男性9161人,女性17308人) |
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2002年4月~2005年1月にベースライン調査を実施 | |
身長,体重,血圧,総コレステロール,HDL-C,トリグリセリド,AST,ALT,γ-GTP,クレアチニン,血糖,アルカリホスファターゼ*,コリンエステラーゼ*,総ビリルビン*,総蛋白*,アルブミン*,アルブミン/グロブリン比*,尿酸*,HbA1c*,LDL-C*,高感度CRP*,B型ナトリウム利尿ペプチド(BNP)*,赤血球数*,ヘモグロビン*,ヘマトクリット*,尿糖,尿潜血,尿蛋白,尿中アルブミン,飲酒状況,喫煙状況,要介護度**,自覚症状,心血管疾患既往歴,受療状況,疾患家族歴,主観的健康感,心電図*,栄養調査***,身体活動調査,眼底検査* *: 一部の対象者のみ実施 **: 2004年の久慈・宮古保健医療圏のみ ***: 希望者のみ実施(実施率72.4%)。日本動脈硬化縦断研究(JALS)による自記式の頻度法によるBDHQ1_1調査票を使用した。 |
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公益信託日本動脈硬化予防研究基金 研究報告書 Int J Cardiol. 2009; 137: 226-35. 日循予防誌. 2010; 45: 9-21. 日循予防誌. 2010; 45: 32-48. 岩手公衛誌. 2006; 18: 25-41. 岩手県北心疾患発症登録調査 いわて東北メディカル・メガバンク機構 東北メディカル・メガバンク機構 |
岩手県は,他の都道府県にくらべて脳卒中や心筋梗塞といった循環器疾患による死亡率が高く,早急な予防対策が求められてきた。そこで,地域一般住民における循環器疾患の危険因子を明らかにすること,とくに大規模なコホートとすることで,発症率が非常に低いためにこれまで十分な検討を行うことができなかった女性の心疾患やくも膜下出血の危険因子を検討することを目的として研究が開始された。対象となった宮古・久慈・二戸医療圏は高齢化が進む典型的な農山村漁村地域であり,日常生活動作(ADL)の低下や寝たきりの問題も公衆衛生学的な課題となっていることから,要介護認定状況もエンドポイントに含められている。
気候や地形の違いも考慮し,対象地域には沿岸部(宮古,久慈)と内陸部(二戸)の両方が含まれている。(左)宮古の代表的な景勝地である浄土ヶ浜。東日本大震災による甚大な被害を受けており,海岸近くにはいまだ仮設住宅も。(中)2013年上期放送の連続テレビ小説「あまちゃん」の主要な舞台のモデルおよびロケ地となった久慈市の小袖海岸。(右)二戸市役所の屋上から望む住宅地 |
ベースライン健診での血圧測定の様子(写真提供: 板井一好氏)
2011年3月に起きた東日本大震災では,久慈および宮古医療圏がとくに大きな被害を受けた。県北地域コホート研究としてではないが,並行して行われている脳卒中発症登録研究から,宮古・久慈・二戸の3医療圏における脳卒中発症登録データからは,震災前に比し,震災後約1か月間の脳卒中罹患率が有意に増加しており,とくに津波による浸水被害が甚大だった地域の高齢者男性では震災前の2.4倍にのぼることが明らかになっている()。また,宮古・久慈・二戸医療圏および三陸沿岸地域における心疾患発症登録データからは,震災の3~4週間後に心不全が増加し,やはり津波の被害が甚大だった地域で顕著であったこと()や,心筋梗塞・突然死は震災および大きな余震の直後に増加したことが示された。今後は県北地域コホートにおける震災の影響についても検証される予定である。震災復興プロジェクトの一つである東北メディカルメガバンク事業では,県北地域コホート研究の実績を活かし,被災地域を中心とする大規模な地域コホート研究(長期健康調査事業)が岩手医科大学と東北大学により開始されている。
・2017.9.29
[2017年文献] 心房細動有病者では,脳卒中および心不全の発症リスクが非有病者より高い
・2016.9.30
[2015年文献] 心房細動は全死亡および心血管疾患死亡リスクの増加と関連する
・2015.7.28
[2014年文献] 男性の徐脈(60拍/分未満)は心血管イベントの独立した危険因子
・2015.1.30
[2013年文献] LDL-C値正常者の急性心筋梗塞+突然死リスク予測に有用な脂質パラメータ
・2013.11.29
[2011年文献] 心血管疾患リスクのBNPの閾値は,男性37 pg/mL,女性55 pg/mL
・2013.10.10
[インタビュー] 岩手ならではのさまざまなしくみを活用した2万6000人の単一地域コホート研究
・2013.10.10
[2013年文献] 日本人向けCKD-EPI式によるeGFRは,MDRD式によるeGFRよりも全死亡および心血管疾患発症リスク予測能が高い
・2013.10.10
[2012年文献] 少量~中程度の飲酒者男性では心筋梗塞発症リスクが低下
・2013.10.10
[2011年文献] 男性のLDL-C/HDL-C比は急性心筋梗塞の予測因子
・2013.10.10
[2010年文献] BNP高値は心不全の予測因子